【完】TEARS−ティアーズ−


「こんなだから?」

「そ。女に冷たい態度とるから。
正宗にもよく怒られる」

「あ、そうなんだ」

「ん」



郁君の表情は拗ねた子供みたい。

それがまた可愛くて。



「あはっ、郁君カワイー」




って!!

あたし、また言っちゃった。

可愛いって。


恐る恐る郁君を見上げたら、あたしを睨んでて。



「お前は、またぁ~」



なんて、ちょっぴり恐い声が降って来る。



「わぁ、ごめんなさぁい」

「本当に反省してんのかよ」



それは怒った声じゃなくて、笑ってるような声で。

再び見上げた郁君は笑っていた。


怒ってなくて良かったぁ。

そう思ったけど、さっきみたいに少し照れてくれないのを残念に思ってしまったあたしもいて。


なんかよくわからないけど。


あたし変なの。



「あ! そういえば今日あたし達と遊んでてよかったの?」

「え? なんで?」

「……彼女さん、怒らない?」



そうだよ。
忘れてた。

郁君にはサッカー部のマネージャーの綺麗な彼女さんがいたんだった。


他の女の子と遊びに行ったら嫌な気持ちになるものなんじゃないかな。

彼氏がいないあたしには、あんまりわからないけど。


多分そういうものだと思う。


だったら、今日のはマズくないのかな?
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