《短編》砂山のトンネル
「亮ちゃんっ!!」
公園の入り口にミキが立っていて、大きな声で俺を呼んでいる。
そんなミキに一端作業を止め立ち上がって叫んだ。
「おー!どーした!?」
俺が言い終えた瞬間走り出したミキが次の瞬間には腕の中にいた。
「うわっ‥」
いきなり飛びついてきたミキにバランスを崩したけど、何とかミキを支えて立て直した。
「何だよ、急に‥‥お前、泣いてんのか?」
俺に抱きついてきたミキは二ヶ月ほど前のファミレスで泣いた時の様に泣いていた。
「うん…」
だけど、その涙の意味はこの前のそれとは違うだろう。
顔を上げたミキはとてもきれいな顔をしていた。
「いつか、髪切ってよね?」
「えっ?!」
「さっき智くんに聞いたよ。」
兄貴か…。
とても嬉しそうなミキが俺には何より嬉しかった。
「一番最初に切ってやるよ!」
「うんっ!!」
そう言ってもう一度抱きついてきたミキのポケットから一枚の紙切れが飛び出した。
風に舞い砂山に着地した。
――第○回 ○○モデルオーディション
審査員特別賞 岡田 ミキ
そのとびっきりのニュースが俺に届くのはあと数秒後…。