《短編》砂山のトンネル
「バイトやめたの?」


あるファミレスの一席で呆れたようにそう呟いたのは、久しぶりに会った幼なじみのミキだ。


「あー。店長がまじムカつくから。」


ミキはモデルになるといってたくさんのオーディションを受けていた。

そしてたくさんの不合格をもらっている。


「ムカつくって‥‥」


ミキは紅茶にミルクを注いでスプーンでクルクル回しながら俺を見た。


「亮ちゃん最初からやる気ないんじゃないの?」

「ねーよ?夢は挫折したし、他にやりたい事ねーもん。」


適当にバイトして、気に入れば続けてあわよくば正社員。


今の俺にはその程度の夢しか残されていなかった。


そんな俺を睨みながら真剣な口調でミキが言った。


「‥‥簡単に挫折なんて言わないでよ。」

「はぁ?」


ミキの言葉の意味が理解できずに間抜けな声を上げた俺。


「亮ちゃん何にもやってないじゃん!!」

「そーだよ?やる前に終わったんだ、当たり前だろ。」


ミキの態度に少しイライラしながら答えた。


「そんなの挫折って言わないんだよ!!頑張った人が、むちゃくちゃ頑張った人が諦める時にやっと挫折って使えるんだよ!」
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