《短編》砂山のトンネル
俺は目を丸くした。

目の前にいるミキが泣いていたからだった‥‥


「ちょっ…泣くなよ!ここファミレスっ!!」


俺は慌ててミキにそう言ったけど、ミキは涙を流しながら話し続けた。


「頑張って…頑張って‥‥それでも叶わない。」

ミキの言葉が痛かった。


「頑張った人がどうしても諦めなきゃならなくなった時…頑張った証として“挫折”って言葉を使うことを許されるの!」


ミキが悩んでるのも

ミキが頑張ってるのも

よくわかっている。


不合格をもらうたび送られてくるメールを打つのにどんな思いなのかも…



「‥‥亮ちゃんは優しすぎるんだよね。わかってるよ。」


さっきまでの口調と違って柔らかい口調になった。


「……とりあえず、もう出よっか。」

「うん。」


自分が泣いてしまって恥ずかしいせいもあるんだろう。

ミキは俺の提案にすぐに頷いた。


店を出てうちに向かってしばらくお互い無言で歩いた。


俺はさっきのミキの言葉をずっと考えていた。


昔の俺が見てた夢は今のこんな俺では、もう触れることすら許されない気がした…

俺は挫折したんじゃない。

自分で捨てたんだ‥‥
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