《短編》砂山のトンネル
「あ、砂山作ろうよ!!ねっ!?」


俺の返事なんて聞かずに素早くジャングルジムを降りて、一直線に砂場を目指して走っていったミキ。


「変わってねぇな。」


ミキは昔から砂場が好きだった。

団子作ったり、篩にかけたり、宝探ししたり…

中でも一番多かったのは砂山作りだった。

それは想像ゲームで、トンネルが開通したらそこに何があるかを言いあった。


「でっかいの作ろう!」


夕日も落ちかかった人気のない公園で、いい大人が二人がかりで砂山を作る光景は異様だったにちがいない。


「ほら、もっと固めてよ!」

「はいはい。」


ある程度砂を盛ってはパンパンと手で叩き固め、そして砂を盛っては固めの繰り返し。

数分後見事な砂山が完成した。


「じゃあ、亮ちゃんそっちからね!」

「はいはい。」


ここからが神経を使う作業だ。両端から少しずつ掘り進めてトンネルを開通させないといけない。

崩してしまえばミキの機嫌がすこぶる悪くなる…まぁ、それは昔の話か。

少しずつ少しずつ堀進める。


「ねぇ、亮ちゃん。」

「壊してねぇよ?」


ミキの呼びかけにすぐさまそう答えると“違うよ”と笑われた。
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