《短編》砂山のトンネル
ゆっくり穴を掘り進めながらミキが言った。
「私ね、今度のオーディション落ちたらモデルになる夢諦めるんだ…」
「えっ!?」
俺がミキの言葉に驚いた瞬間だった。
『あっ!!』
二人の言葉が重なったと同時に指先も重なった。
「繋がったね(笑)」
そう言いながらミキはトンネルから腕を引き抜き立ち上がった。
俺は驚きでまだ動けずにいた‥‥
「さ、帰ろ!!」
「おぅ…」
ミキのその言葉に俺も立ち上がった。
家までの100メートルはまた沈黙が続いた。
向かい合った俺らの家。入る前にミキに訪ねた。
「次のオーディションいつなんだ?」
俺の質問にミキは笑顔で言った。
「昨日受けてきた!」
その笑顔はすごく悲しそうでもあって、すべてを受け入れている様でもあった。
俺は“そっか”とだけ返して家に入った。
砂山のトンネル
端と端から通わせた二人の手と手
そんな何ともない事でさえ
あの頃の俺らは、笑顔で称え合ったっけ‥‥
そんな何ともない事が、大げさに言えば
小さな俺らの夢だったのかもしれない。
「私ね、今度のオーディション落ちたらモデルになる夢諦めるんだ…」
「えっ!?」
俺がミキの言葉に驚いた瞬間だった。
『あっ!!』
二人の言葉が重なったと同時に指先も重なった。
「繋がったね(笑)」
そう言いながらミキはトンネルから腕を引き抜き立ち上がった。
俺は驚きでまだ動けずにいた‥‥
「さ、帰ろ!!」
「おぅ…」
ミキのその言葉に俺も立ち上がった。
家までの100メートルはまた沈黙が続いた。
向かい合った俺らの家。入る前にミキに訪ねた。
「次のオーディションいつなんだ?」
俺の質問にミキは笑顔で言った。
「昨日受けてきた!」
その笑顔はすごく悲しそうでもあって、すべてを受け入れている様でもあった。
俺は“そっか”とだけ返して家に入った。
砂山のトンネル
端と端から通わせた二人の手と手
そんな何ともない事でさえ
あの頃の俺らは、笑顔で称え合ったっけ‥‥
そんな何ともない事が、大げさに言えば
小さな俺らの夢だったのかもしれない。