アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
ん?兄貴!?
今、兄貴って言ったよね?
私の視線は、伸也さんと低い声の男を交互に行ったり来たりした。
なるほどね。
二人を何往復したか、わからないけど、やっと頭の中の混乱が治まってくる。
兄弟だからか。
だから、どこかで見たことある顔だったんだ。
「兄貴」
「あ?」
「こないだ話した子。女じゃない」
「あぁ。そっか。悪かったな」
そう言いながら、私の頭をポンっとして、伸也さんの近くに腰を下ろしたお兄さん。
そこから話しはじめた2人の会話は、全くと言っていいほど意味が分からなかった。
日本語で話しているのはわかる。
所々に出てくる単語も分かる。
でも内容がわからない。
兄弟だから通じ合ってる、とかいうのともまた違う。
暇だけど、ねっ転がるのも失礼だし、かといって話題に入っていけるわけはなく、ただ時間だけが過ぎていった。