アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
「兄貴に連絡するのは、どうしてもって時だけだぞ」
「するつもりはない」
「もしも安易にしたら、大変な目にあうからな」
「どういうこと?」
「兄貴に助けを求めたら、どこにいても24時間以内には駆けつけてくれる。」
「うん」
「相手がいることで助けを求めたら、相手は間違いなく今までの生活はできなくなる」
「どういうこと?」
「たとえばお前がこたぁに暴力を振るわれて、兄貴に助けを求めるだろ?」
「うん」
「したら、兄貴はこたぁをボコボコにするのはもちろん、どこまでも追い詰める」
「うん」
「で、こたぁは兄貴から身を隠しながら生活しなくちゃいけなくなる」
「えっ?」
「だから、安易に助けを求めるな。お前がどうしてもって時だけだ」
「わかった」
「相手に少しでも愛情や同情があるときは、兄貴に助けを求めたらお前が後悔する」
「わかった」
「お前が見なくてもいい世界の人間だ」
そう言うと一瞬、悲しそうな顔をして、伸也さんは何も喋らなくなった。