アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
「あぁ、履き替えるの忘れた!」
「そ、そっか」
「俺、小橋 猛(コバシ タケル)。亜美ちゃん宜しく」
すごいまぶしい笑顔。
「宜しく」
私は真っ直ぐに見つめられる瞳から視線を逸らして挨拶をした。
その後の言葉が続かずに困っていると帰り支度をしたカナがタイミング良く私に声をかけてくれた。
「亜美お待たせ」
「行こう」
私はカナの手を引き、逃げるように教室を後にした。
まだ肌寒いので、コートを着ながら廊下を歩く。
玄関には、怖そうな人たちが沢山。
目を合わせないように、早足で歩く。
カナも怖いのか、下を向いたまま一言も喋らない。
あと少しで校門。
そう思っていたのに
「亜美ちゃんバイバイ」
と、小橋が手を振っている。
余計なことを……
何人かの視線を感じながらも、私達は聞こえないふりをしてダッシュした。