アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


伸也さんはシャワーを浴びるとすぐに、お財布と携帯を持って外に出て行った。



また一人か……




暇な時間に飽きてきて大きく溜め息を吐いて、ソファーに体を預けた。



けれど、5分もしないうちに開いた部屋の扉。



伸也さんはラーメン屋さんが持つような銀色の箱を持って帰ってきた。



「今日はこれを食べろ」



「食べたくない」



出された料理が何かを見る前に即答したことに、少し眉間に皺を寄せた伸也さん。



「スープだから大丈夫だ」



そう言ってテーブルに置かれた食器からは、トマトのいい香りがしていた。



「スープなら飲めるだろう?」



「うん」



銀の箱からもう一つの皿を出すとハンバーグだった。



思わず「クスッ」と声が漏れてしまう。



「何笑ってんだ」



「伸也さんハンバーグ好きなんだもん」



「悪いか?」



「別に」



私はスープをスプーンですくい、ゆっくりと口の中へ運んだ。



「おいしい」



「沢山食え」



「うん」



トマトベースにバジルや野菜が入っていた。



野菜を食べることは出来なかったけど、スープは全部飲み干した。

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