アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
病院を出てマンションへと向かった。
たまり場に行く勇気はなくて、伸也さんの部屋に入った。
お風呂場へ入り、浴槽にお湯をためる。
そして、服を着たまま浴槽に浸かった。
私が割った鏡の破片を手にして、左手首に押し付けた。
私のすべての力を注ぎ込み、ガラスの破片を手前に引く。
するとスーっという感覚とともに線上に血が浮かび上がる。
お風呂のお湯に薄まっている自分の血を見ながら、このまま死ぬんだと実感する。
私の人生は幸せだったのだろうか?
それとも不幸だったのだろうか?
幸せだったんじゃないかって思う。
幸せだから死ねるんだ。
幸せだから死ぬことが怖くないんだ。
私が死んでも、こたぁの意識が戻るわけではない。
でも、こたぁを愛している人たちの心は、少しだけ救われるかもしれない。
この時の私には仲間への責任の取り方すら知らなかった。
というより、“責任”という言い訳を作り、ただ終わらせたかっただけかもしれない。
すべての苦しみから解放されたかった。