アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
まだ自分では動けないから、いつも天井のシミを眺めてる。
「上ばっかりじゃ嫌よね」
その体のどこに力があるの?ってくらいガリガリの体で、私の体を窓側に傾けてくれたお婆さん。
窓を見たって、ビルばかりで空など見えないのに。
「ありがとうございます」
「あらっ。口利けるのね」
驚いた顔をしてそう言うと、楽しそうに笑って自分のベッドへ戻っていった。
それから、一日に一回体を動かしてくれる。
何も言わずに、ただ傾けるだけ。
毎日、沢山の人がお見舞いに来たけど、誰とも話さなかった。
でも、お婆さんには「ありがとう」と必ず言った。
毎回「口利けるのね」って笑うお婆さん。
全然似てないんだけど、昔のママに似ていた。
顔や声なんかは全然似てないんだけど……