アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
誰とも話したくない。
誰かの会話に耳を傾けている余裕なんてないし、みんなが私の顔色を伺って話をしてくる。
その姿は、まるでピエロみたいだった。
看護師さんや先生は何でも話して欲しいと優しいし、伸也さんも何も聞かない。
お婆さんだけは違ったけど……
お婆さんだから何も気にしないのか、私の身に何があったか知らないから普通なのか。
でも、大げさに巻かれている左手首の包帯を見ればわかる人はわかる。
ママに似たお婆さんはいつも楽しそうだった。
昔のママのようにいつも笑っていた。
もう一人で体を傾けることはできるのに。
面倒くさいから、ずっと天井を見ているだけなのに。
お婆さんは毎日、私の体を動かしてくれた。
「ありがとう」
「やっぱり口利けるのね」
私の一日一回の会話。