アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


次の日は、朝早くに手術の用意が始まっていた。




「頑張って」




「頑張るのは私じゃないわ。私は寝てるだけ。頑張ってもらわなくちゃいけないのは、先生達ね」





お婆さんはそう言って、いつもの笑顔を向けてくれた。




その笑顔が、いつもより眩しかったのは気のせいかな?




手術の予定時間は3時間。



なんだか落ち着かない。




命に危険がある手術ではないらしいが、もしものことなんて考えちゃう。



手術が終わってもすぐに部屋には戻ってこないから、いつ手術が終わったのかわからない。



廊下にいる看護師さんを捕まえては、手術のことを聞いていた。




「手術終わったわよ」




落ち着きのない私を見兼ねてか、看護師さんに終わったら教えるからベッドで寝ててと言われた。




そう言われてから1時間13分後手術は終わった。




何かしてたくて、ベッドに戻ってからは、時計をひたすら見ていた。



1分が長い。



だから1時間13分もよく待てたと思う。




「成功した?」




「手術は成功よ」




手術は……ってなんか引っかかる言い方。




「成功しなかったことがあるの?」




「そうじゃないわ。これからが大変なの。毎日リハビリしなくちゃいけないから」




「お婆さんにできるの?」



「若い子でも辛いリハビリね」




「そうなんだ」




「大丈夫よ」




ここに入院してから何度も聞く“大丈夫”って言葉。

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