アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
お婆さんの手術の3日後に私は退院した。
お婆さんには会えなかったから、連絡先を書いた紙を渡してもらうように頼んだ。
伸也さんに手を引かれ、白のセダンへと乗り込む。
みんなにどんな顔をして会えばいいんだろう。
でも、私の帰る場所はあそこしかない。
憂鬱な気持ちが体を支配して、異常なくらい手足が重たく感じる。
足を引きずるように車を降りた。
久しぶりの景色に手が汗ばむ。
緊張を少しでも解すために、マンションのエレベーターで大きく息を吸い込む。
「ただいま」
伸也さんが溜まり場のドアを開けて中に声をかけた。