アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
伸也さんの部屋に行くのも少し抵抗がある
あの日、私を助けてくれたのは伸也さんなのかな?
お風呂場は掃除したのかな?
誰が片付けたんだろう?
伸也さんの話って、あの日のことだよね。
私、怒られるのかな?
伸也さんの部屋まで1分もかからないのに、様々な疑問が一気に頭の中に浮かぶ。
伸也さんが鍵を開けて、部屋に入る。
私も伸也さんも何も話さずにソファーへと座った。
「亜美、何か飲むか?」
「ううん。いらない」
「体は平気か?」
「もうなんともない」
突然、ドスっと私の肩に顔を埋めてきた伸也さん。
「どうしたの?」
「俺、マジでビビった」
「ん?」
「あの日、部屋に帰ってきて、暫くここでテレビ見て、お前のことが気になったから携帯に電話した」
「うん」
「そしたら俺の部屋で、携帯が鳴るから慌てて、お前の姿を探したんだ。どこ探してもいねぇし、携帯だけ忘れていったのかと思って、音のするほうに歩いていったら、風呂場だった」
「うん」
「で、ドア開けたら、真っ赤なお湯に浸かってる真っ白なお前がいた。死んでんのか、生きてんのかもわかんねぇし、どうしていいのかわかんなかった」
伸也さんの話の相槌をしようと思ったけど、伸也さんの声があまりにも振るえていて声が出なかった。