アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
「でも、まだ生きてんなら、早く病院に運ばないといけねぇから、震える体を必死に動かして、お前を抱きかかえた」
「…………」
「そしたら、お前“ママ”って言ったんだ」
「えっ?」
「真っ白な体して、真っ青な唇して、かすれた声でママって呼んだんだ。その声聞いて、コイツ助けれるのは俺しかいねぇと我に返った」
ママに抱きしめられてた感覚は、伸也さんの腕の中だったんだ。
「俺、お前がいなくなると思ったら怖くてたまらなかった」
伸也さんは顔を上げて、私の目を見てそう言うと、一滴の涙を流した。
「伸也さん……私、ごめんなさい」
「俺を一人にしないでくれ」
始めて見る、伸也さんの弱々しい姿。
「私、ずっと死ぬのなんて怖くなかったの」
「亜美……」
伸也さんは、もう聞きたくないと言わんばかりに、顔を逸らした。
「聞いて」
「あぁ」
「幸せだから、死ぬのが怖くないのかなって思ってた。今も怖くない。でも、カズや猛を傷つけて、伸也さんにそんな顔させて、反省してる。後悔してる」
「あぁ」
「私、約束するよ。伸也さんのために生きる。生きることに希望なんてないし、生きることが辛いって思う日のほうが多い。死ぬことも怖くないし。でも、伸也さんのために生きる。私なんかの命のために、涙を流してくれた、伸也さんのために側にいるよ」
「あぁ」