アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
今日は伸也さんが運転するから、私は助手席へと乗り込んだ。
「お前が食べれそうなものだな」
「うん」
「食べたいものあるか?」
「前に“shot”で食べたトマトのスープが食べたい」
「あれかぁ、わかった」
あのスープを飲んだのはあの時1回きりで、その後に似たようなスープも飲んだけど、おいしさは断然最初のほうだった。
車は“shot”の近くを走っている。
細い道を何度も曲がって、たどり着いたのは、小さな喫茶店。
「ここのスープ?」
「あぁ」
伸也さんは車を止めて、すぐに外に出てしまったから、私も急いで後を追いかける。
何も言わずに店の中へと入る伸也さん。
「そこの席に座ってろ」
「うん」
お店の中はバーのような雰囲気で、カウンターとテーブル席がいくつかある。
伸也さんが座ってろと指差した席は、窓側の日が差し込んでいる席だった。
定員さんが誰もいないなんて変な店だな。
お客さんもいない。