アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


伸也さんの部屋に戻ってからも、居づらい空気に耐え続けた。



すると、突然私の携帯が鳴った。



慌てて携帯を開き通話ボタンを押した。



めったに使わない携帯電話。



だから、音が鳴ると慌てて出てしまう。



「もしもし」



枯れた声の女の人が出た。


「はい」



「新垣 亜美ちゃんかな?」



「はい。そうですけど」



誰?



「よかったわ」



「どちら様ですか?」



「退院したのよ。私」



「お婆さん?」



「えぇ。遊びのお誘いのお電話してみたの」



ゆっくりと品のある話し方をするお婆さんの声は、少し元気がないように感じた。



明日のお昼に家に来てほしいと言われ、住所を聞いた。



ここからは少し遠いから、伸也さんに送ってもらえるか聞いてダメだったら連絡すると言って電話を切った。



電話の内容は聞いていたはずなのに、何も言ってくれない伸也さん。



いつもなら「送ってやる」ってすぐに言ってくれるのに……


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