アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


「そっちの部屋にいる方は?」



聞いていいのかわからなかったけど、気になるままにしておきたくなくて、恐る恐る聞いてみた。



「こっちへきて頂戴。紹介するわね」



畳の部屋に入って行くたまさんの後を着いて行くと、ベッドの上に男の人が横になっていた。



男の人というよりは、お爺さん。



「亜美ちゃん、私の主人です」



たまさんの旦那さんは、目は開いているけど、声に反応しない。



「ボケちゃって、もう歩くこともできないの」



「いつから寝たきりなの?」



「5年前ね」



旦那さんを介護してたから、入院してた時にあんな簡単に私の体を動かせたんだ。



「入院していたときは?」



「専門の方に頼んでいたの」



「子供とかはいないの?」



その質問には、苦笑いしながら答えてくれた。



「いるんだけど、年寄りのお世話は煙たがられるから」



お婆さんの言葉になんて返事をすればいいのかわからない。



私もパパがこうなってしまったら、介護してあげれるかどうかわからなかったから。


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