アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
「立ち話もなんだから、向こうに行きましょうか」
「うん」
「亜美ちゃん、朝ご飯は食べたかしら?」
「いいえ。普通のご飯は食べれなくて」
「そうかい」
たまさんは何も聞いてこない。
だから、話していいのかわからない。
でも、たまさんに話したかった。
そんなことを考えながら黙っていると、たまさんが口を開いた。
「お父さんね、優しい人だったのよ」
「えっ?」
「頑固だけど優しかったの」
「うん」
「だから、せめてもの恩返しに私が面倒を見たくて見てるのよ」
「でも、腰だって悪いのに」
「お父さんの側にいたいのね」
恋って言い方は変だけど、恋しているような眼差しで旦那さんを見つめている。
素敵だな。
他人同士でも、血が繋がっていなくても、こんなにも愛することができるんだ。
お婆さん達を見ていると、愛って言葉がふさわしいような気がした。