アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


「たまさんって、すごいよね!」



「なにが?」



帰りの車の中で、たまさんのことを話した。



「旦那さん寝たきりなんだけど、介護してるんだよ」



「すごくねぇよ。自分の命粗末にしやがって」



「どういうこと?」



「あの婆さん、爺さんの面倒見るために腰の手術したんだよ」



「えっ?」



それの何がいけないの?



「あの年で手術する意味なんてないんだよ」



「どうして?」



たまさんのことを悪く言われてムキになった。



あんなに旦那さん思いで、素敵な人のことをどうして悪く言うの?



「手術したって、リハビリにすごく体力がいるから医者は手術を勧めない。リハビリができなければ、手術をする前より悪くなっちまう」



そう言って、少しイライラしながら、タバコに火をつけた。



「でも、たまさんはリハビリ頑張ったじゃん」



「たまたまだろ」



「たまたまじゃない!」



どうしてそんな酷いこと言うの?



「亜美、最後まで聞け」



「もう聞きたくない」



「最後まで聞けって!」



伸也さんの声が大きくなる。



「たまさんの悪口なんて聞きたくない」



「悪口じゃないだろ」



「悪口じゃん」



「お前のために話してるんだ」



「どこが私のためなんだかわかんないし!」



「最後まで聞かねぇからだろ」



「…………」



悔しいから泣きたくない。


涙はギリギリのとこまで来てるけど泣くもんか。



< 187 / 688 >

この作品をシェア

pagetop