アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
「たまさんって、すごいよね!」
「なにが?」
帰りの車の中で、たまさんのことを話した。
「旦那さん寝たきりなんだけど、介護してるんだよ」
「すごくねぇよ。自分の命粗末にしやがって」
「どういうこと?」
「あの婆さん、爺さんの面倒見るために腰の手術したんだよ」
「えっ?」
それの何がいけないの?
「あの年で手術する意味なんてないんだよ」
「どうして?」
たまさんのことを悪く言われてムキになった。
あんなに旦那さん思いで、素敵な人のことをどうして悪く言うの?
「手術したって、リハビリにすごく体力がいるから医者は手術を勧めない。リハビリができなければ、手術をする前より悪くなっちまう」
そう言って、少しイライラしながら、タバコに火をつけた。
「でも、たまさんはリハビリ頑張ったじゃん」
「たまたまだろ」
「たまたまじゃない!」
どうしてそんな酷いこと言うの?
「亜美、最後まで聞け」
「もう聞きたくない」
「最後まで聞けって!」
伸也さんの声が大きくなる。
「たまさんの悪口なんて聞きたくない」
「悪口じゃないだろ」
「悪口じゃん」
「お前のために話してるんだ」
「どこが私のためなんだかわかんないし!」
「最後まで聞かねぇからだろ」
「…………」
悔しいから泣きたくない。
涙はギリギリのとこまで来てるけど泣くもんか。