アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
一生消えない傷が一つ、私の手首にはついてしまったのだから、傷がつくことには何の抵抗もなかった。
体に傷が一つ出来るたびに、心の傷が一つ消える。
「亜美」
伸也さんの声が窓の外から聞こえる。
「亜美、降りて来い」
携帯を見るともう夜中の2時だった。
私、いつからこうしていたのだろう……
手首の血をふき取って、急いで家を出た。
「連絡しろって言ったろ」
伸也さんは、かなり怒っている。
「こんなに時間がたってるって思わなくて」
「乗れ」
「うん」
伸也さんはタバコに火をつけて、私のほうを見た。
「心配させんな」
「ごめんなさい」
「大丈夫か?」
「何が?」
「話、嫌な話だったんじゃねぇのか?」
「そんなことないよ」
「そうか」