アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
アイシテル 4
噂
左手の手首には切り傷だらけ。
誰にも気づかれないように、隠し続ける毎日。
夏だったら、伸也さんにバレていたかもしれない。
でも、もう雪の降る季節。
だから、バレないようにすることは簡単だった。
カミソリを握り始めてから、ご飯も食べれるようになり、眠りにもつくことが出来る。
伸也さんは、そのことはすごく喜んでくれた。
「もうそろそろ、大丈夫そうだな」と言って私の頭を撫でてくれる。
あの日から、こうしていれば良かったんだ。
そうすれば、好きな人を傷つけることも、大切な仲間を傷つけることもなかった。
「亜美、お前テスト近いんだろ?勉強してんのか?」
仕事に行く用意をしている伸也さんが、突然学校の話をしだした。
「うーん。頭のいい学校じゃないから勉強しなくても大丈夫」
「お前、バカそうに見えて出来るらしいもんな」
「はっ?何それ?」
「俺の思いを伝えただけだ」
「そんなもん伝えなくていいし」
「行ってくるわ」
キレかけている私の頭をクシャクシャとして部屋を出て行った。
そんなことするの反則だし。