アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
「亜美、立ってられるか?」
コクリと頷く私をそっと降ろした伸也さんは、恭のほうへと振り返った。
「何か用か?」
「亜美を返してくれ」
「返す?」
「元は俺のもんだ」
「お前の元に返すつもりはねぇ」
「後悔するぞ?」
「勝手にしろ」
恭と伸也さんの睨み合いが始まった。
どちらも目を逸らそうとしない。
その空気を破ったのは、コウスケ……
「恭さん、コイツ誰っすか?」
その途端、伸也さんはコウスケの胸倉を掴んだ。
「口の利き方には気をつけろ」
コウスケの顔は見る見るうちに青ざめる。
「ウチのが悪かったな。見逃してくれ」
もしかして、コウスケは恭に言われて私に近づいたの?