アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


「何から話せばいいのかな?」



「まずはお前の左手の傷だ」



「あっ」



私は思わず口を手で覆った。



「バレてた?」



「当たり前だ。何があった?」



「理由はどれっていうのはわからない」



「じゃあ、そうするようになった時期にあった事は?」



「電話でママに呼ばれたの」



「あの日か?」



「うん」



私は家族のことと、家族がバラバラになった日のことを話した。



そして、あの日、呼ばれた理由も……



「お前は何で父親の姓に決めたんだ?」



「みんなに苗字が変わったこと聞かれたくなかったから」



「そうか。本当は学校のことを話した日に言おうと思ってたけど……言えなくて」



もしかして、いきなりテストのこと聞いてきた日かな?



「お前は俺が面倒見る。だから、安心しろ」



「ん?」



「だから、お前がよければいつでも嫁にもらってやる。苗字のことも深く考えなくても、嫌になったら谷沢になれ」



耳を赤くしてそう言う伸也さんを愛おしいと思った。



嫁にもらってやるなんていうプロポーズ、今時聞いたことないけど、私にとっては録音しておきたかった言葉。


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