アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
携帯の着信音で目を覚ますと、カーテンの隙間から光が差し込んでいる。
ダルイ体を起こし、ボストンバックの中に手を入れて携帯を取り出した。
ディスプレイには伸也さんの名前。
私は着信拒否をして、履歴画面を開いた。
すると、そこには伸也さんの名前で埋め尽くされた着信履歴が……再び涙が零れ落ちる。
涙はいつになったら枯れるんだろう。
携帯を枕元において、バスルームへと向かった。
化粧もしたままで寝た顔は酷いことになっている。
私はシャワーを浴びて、もう一度携帯を手にした。
このまま逃げ続けていたってしょうがない。
伸也さんと話をしなければ。
少し震える指先で発信ボタンを押す。
ワンコールが鳴らないうちに伸也さんは電話に出た。
「亜美……」
私の大好きな声。
「話がしたい」
「うん」
「家に行ってもいいか?」
「うん」
「じゃあ、今から行く」
そう言って伸也さんは電話を切った。
伸也さんが来る前に何か食べようと思い、冷蔵庫を開けたけど、もちろん何もない。
お財布を持って外へ出た。