アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
「亜美……」
そんな声で私のことを呼ばないでほしい。
伸也さんに名前を呼ばれると胸がドキドキして、体中が熱くなったはずなのに。
今は涙がこぼれてしまいそう。
かすれた声で私の名前を呼ぶ伸也さんの胸の中に飛び込んでしまいそうになる。
でも、もうそれは出来ない。
私は、私だけを見てくれない伸也さんの側にはいれない。
前の私にはもう戻れないんだ。
「レイカのこと聞いてくれるか?」
「話す必要なんてないよ。私はもう一人で大丈夫だから」
「亜美!頼む。聞いてくれ」
「伸也さん。私はどんな理由があったにしろ、伸也さんの側には戻れない。ごめんなさい」
伸也さんは泣きそうな顔をして、立ち上がった。
「俺はこれからも亜美だけが好きだ。でも、今はお前に本当のことを話せないと思う。だから、すべてが終わったら会いに来る。必ず迎に来る。だから、生きててくれ」
そう言い残し、伸也さんは出て行った。