アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


私の家を出てから、祐とは何も喋っていない。



何を話せばいいのかわからないし、祐も黙ったまま。



一応、教室の前で「ありがとう」って言ったら「おう」とだけ返ってきた。



自分の席に鞄を置いて、カズの席を見るとカズはこっちを見て手を振っている。



目が腫れている気がする。


私はカズの元へ行き、顔を覗き込んでみる。



「何かあった?」



「ちょっと、こたぁと喧嘩しただけ」



「大丈夫?話聞くよ」



「もう、仲直りしたから大丈夫」



「そっか」



「亜美こそ、何かあったら話聞くよ」



「聞いて欲しいことあるかも……」



私のその言葉にカズの顔はパーっと明るくなり、私の手を力いっぱい掴んだ。



「よしっ!今日はサボるよ」



「えっ?」



「語りに行きましょい」と大きな声で言うと、私の鞄を持って教室を出て行った。


< 295 / 688 >

この作品をシェア

pagetop