アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
私の家を出てから、祐とは何も喋っていない。
何を話せばいいのかわからないし、祐も黙ったまま。
一応、教室の前で「ありがとう」って言ったら「おう」とだけ返ってきた。
自分の席に鞄を置いて、カズの席を見るとカズはこっちを見て手を振っている。
目が腫れている気がする。
私はカズの元へ行き、顔を覗き込んでみる。
「何かあった?」
「ちょっと、こたぁと喧嘩しただけ」
「大丈夫?話聞くよ」
「もう、仲直りしたから大丈夫」
「そっか」
「亜美こそ、何かあったら話聞くよ」
「聞いて欲しいことあるかも……」
私のその言葉にカズの顔はパーっと明るくなり、私の手を力いっぱい掴んだ。
「よしっ!今日はサボるよ」
「えっ?」
「語りに行きましょい」と大きな声で言うと、私の鞄を持って教室を出て行った。