アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
「そこの角を左です」
「おう」
白髪だと思っていた男の髪の毛は綺麗なシルバーだった。
所々に黒のメッシュが入っていて、窓から入る風になびいてフワフワと揺れる。
「ここでいいです」
「亜美ちゃん、俺の番号も入れておいたから、何かあったら連絡して」
「うん。ありがとうございました」
一応、男にそう言って車を降りた。
家に向かって足を進めようとした時、
「おい」
と言う声とともに車の窓が開いた。
声の主は口調からして白髪男だろう。
そう思いながら視線を車に向けると、案の定白髪男が窓から身を乗り出していた。
「いつもこうやって助けてもらえると思うな。もう二度と来るな」
いきなりそんなことを言われた。
呆然とする私を尻目に車は去って行く。