アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


お腹には激痛がはしる。



そして、口の中には血の味が広がる。



でも、負けたくなかった。



私の家族を壊し、私の人生を変えた。



そして、ママの人生も……



「このくらいしか出来ないのかよ?殺す勇気なんてないんじゃねーのか?殺してみろよ!」



私は残りの力を振り絞って境に向かって叫んだ。



境は私の胸倉を掴み上げ、拳を振り上げた。



「亜美!」



その時、沢山のエンジン音と共に伸也さんの声が聞こえた。



「てめぇ!誰の女に手あげてんだ?」



伸也さんの怒鳴り声は倉庫中に響き渡る。



「君が有名な伸也君かい?」



男は振り上げた拳を下げ、ズボンのポケットから何かを取り出し、私の首に突きつけた。



冷たい感触で、それがナイフだとわかった。



鬼のような顔をした伸也さんが、私へ向かって歩いてくる。



手を伸ばせば届きそうくらいの距離に伸也さんはいる。



それなのに突然、境が「動くな!」と叫んだ。



私が伸ばした手は、あと少しで伸也さんに触れられたのに……


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