アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


首にあてられたナイフを持つ、境の手は少し震えているような気がする。



「離せ」



伸也さんの低い声が響く。



「伸也君、大事な彼女を殺したくないなら、僕に逆らわないこと」



伸也さんは、境の言葉に足を止めた。



すると、桐藤 大地が伸也さんに近づき拳を振り上げる。



きっと、伸也さんは抵抗しない。



私はいつも伸也さんに守られてばかり……



助けられてばかり……



私だって愛する人を守りたい。



愛する人の時間や未来を守るためなら、こんなこと少しも怖くなかった。



一歩、伸也さんへと近づいた。



「亜美ちゃん、じっとしてて。こんなことしたくない」



境の声が震えている。



「私は死ぬことなんて怖くない」



私の言葉に、甲高い声で笑う境。


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