アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
真実
目を開くと、どこかのベットに寝かされていた。
消毒の臭いで、そこが病院だということにすぐ気づいた。
起き上がると、首に痛みが走る。
「亜美」
伸也さんがタイミングよく部屋へ入ってきた。
「大丈夫か?」
「うん」
私は椅子に腰掛けた伸也さんに手を伸ばした。
「どうした?」
「ずっと、触りたかった……」
伸也さんは、私の左手を両手で包み込んでくれる。
やっと落ち着ける。
この手に触れるだけで……
この体温を感じるだけで……
私は、こんなにも満たされる。
「伸也さん……」
呼びたくてたまらなかった名前。
「あぁ」
答えて欲しかった日々。
「会いたかった」
寂しさに壊れた心。
「俺もだ」
そんなすべてが、この一言で消されてしまう。