アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
「伸也さんは、19歳なんだ。喧嘩とかめちゃめちゃ強いんだよ。かっこいいし」
聞いてもいないのに、猛は伸也さんのことをベラベラと話し出した。
名前は谷沢 伸也(タニサワ シンヤ)19歳。
眠らない街を仕切るほどの有名な人らしい。
そんなこと私にはどうだっていいこと。
「亜美ちゃん、着いたよ」
車を降りると、大量のネオンが目に付き刺さる。
「行こう」
この間はちゃんと見ていなかったけど、ここはクラブらしい。
名前は“Shot”。
人で溢れかえっている店内を通り抜けて、階段を上るといくつもの扉があった。
「関係者の人たちの部屋がいくつもあるんだ」
じゃあ伸也さんもここのクラブの関係者の一人か。
「おっ、邪魔しまーす!!」
「猛は毎晩うるせーよ」
「そうっすか?今日は友達連れてきました」
「女か?」
「はい。伸也さんもこの間」
猛が話している途中で、伸也さんの前に顔を出すと鬼のような形相でこっちを睨みつけて怒鳴られた。
「てめぇ!!二度と来るなって言っただろ?!またヤラれたいのか?!」
「伸也さん、俺が無理やり連れて来たんすよ」
「お前に言われる筋合いない」
「あっ?」
「てめぇに言われる筋合いねぇよ。助けてくれなんて頼んでねぇし、助けてもらった覚えもない」
「ここまで運んでやったの誰だと思ってんだよ」
「知らねぇよ!!ヤラれたんだから、助けたうちにはいらねぇだろうが!」