アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


暑さに寝苦しさを感じて目を覚ますと、隣には伸也さんがいる。



伸也さんの寝息と外から聞こえる小鳥の囀りが心地いい。



こんな都会でも、鳥の鳴き声なんか聞こえるんだな。



今まで、耳にしたことがない。



実際は聞こえていたんだと思う。



でも、私の耳には届いてこなかった。



心が穏やかになると聞こえる音がある。



心が満たされると見えるものがある。



幸せも不幸せも自分次第なのかもしれない。



「起きたのか?」



目を擦りながら伸也さんは体を起こす。



「暑くて起きた」



「確かに暑いな」



伸也さんはクーラーのリモコンを手にして、スイッチを押すと心地良い風が体にあたる。


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