アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
内面
伸也さんの側に、もう一度いることが出来るようになって、私はたまさんに無性に会いたくなった。
どうしてなのかはわからない。
苦しみの中にいるときには、助けを求めたいとは思わなかったのに、すべてが解決され落ち着くとたまさんの顔が浮かんできた。
「今日は休みだから、どこか連れて行ってやる」
洗面所から伸也さんの声が聞こえる。
「服でも買いに行くか?」
「たまさんのところに行きたい」
「あっ?あの婆さんか?」
「うん」
「いいけど……それなら送り迎だけだぞ」
「一緒に行かない?」
「お前の友達だろ。2人でゆっくり話してこい」
別に、今日じゃなくたってたまさんには会える。
伸也さんのせっかくの休みなのに、別行動を取る必要はない。
「今日じゃなくていいや」
私は伸也さんのことを考えてそう言った。