アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
手が震えてるせいで、ジーンズのボタンがうまくできない。
「今日じゃなくてもいいぞ」
そんな私の手に、伸也さんはそっと触れてくれる。
「会いたい」
「わかった。車回してくるから、用意して降りてこい」
「うん」
伸也さんの手が離れると、再び震えだす手。
なんで震えてるんだろう?
ママに会うのが怖い?
そういうわけではない。
元気な姿を早く見たいって、ずっと思っていた。
じゃあ何で……
震えてる右手を左手で強く握り締めて部屋を出た。