アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


朝起きても物音一つしないこの部屋は、私が嫌いだった境とママのマンションを思い出させる。



「行ってきます」



無意識にそう言ってしまう自分が悲しい。



きっと学校から帰って来る頃には、伸也さんは何事もなかったように笑いかけてくれるはず。



そう信じたい。



伸也さんは大人だから大丈夫だと、何度も言い聞かせて学校への道のりを歩いた。



高校に歩いていくのは初めてかもしれない。



朝、こうして歩くのも悪くないな。



夜は賑やかなこの街も、人一人いなく、静まり返っている。


< 449 / 688 >

この作品をシェア

pagetop