アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


自分の馬鹿さ加減に嫌気が差す。



でも、今はこんなことで落ち込んでる場合じゃない。



前に突っ込むしか方法はないな。



もう一度、手に力を入れた。



「ほらっ。楽しいから行こうよ」



男が一瞬、私に近づいた隙を見て走り出した。



ドスッ



誰かに抱えられた。



「逃げる気?」



走った私を抱えるように捕まえたのは、さっきまで後ろにいた男。



何で、前に来てんだよ。



知らない男に触れられた瞬間、全身が震え出す。



「この子、震えてるぞ」



「じゃあ、車の中で介抱してあげるからね」



引きずられながら、コンビニの駐車場に連れて行かれる私。



ヤッ……



叫びたいけど、怖さのあまり声がでない。



涙だけがポタポタと落ちる。



悔しい。



力のない自分が情けない。



伸也さんに会いに行くことさえ、一人でできない自分に、無性に腹が立つ。



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