アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
目の前で起きていることから逃げたしたい私は、耳を手で塞ごうとした。
その時、誰かに抱きかかえられた。
伸也さんの匂いじゃない。
伸也さんは負けたんだ。
恐る恐る目を開けると、私を抱きかかえていたのは……
「遼ちん?」
「おう!亜美ちゃん、久しぶり!危ないから移動しような」
遼ちんは、私をコンビニの前で降ろすと、ポッケに手を突っ込んでタバコを取り出した。
「伸也さん、助けてよ!」
呑気にタバコなんて吸っている遼ちんに、大きな声で訴えた。
けど、遼ちんは私の頭を撫でるだけで動こうとはしてくれない。
「ちゃんと見てごらん」
そう言って、駐車場を指差す遼ちん。
この人は何で笑顔なんだろう。
伸也さんが、どうなってもいいと思っているのか……
私なんてなんの役にも立たないかもしれないけど、伸也さんを守りたい。
奥歯を噛み締め、振り返った。