アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
いくら問いかけたって、たまさんは答えてくれない。
いくら望んだって、たまさんは笑いかけてくれない。
「伸也さん、帰りたい」
「今日で最後だぞ?いいのか?」
「こんなたまさん見ていられない」
「わかった」
私達は部屋を出て、すれ違う人に頭を下げながら家を出た。
たまさんの笑顔がない、この家からはやく立ち去りたくて、足早に歩いていた私に「待ってください」と言う中年男が聞こえた。
振り返ると、私たちを追いかけてくる男。
「これ母から亜美さんに。もらってやってください」
そう言って渡されたのは茶色い封筒だった。
持つ手が震える。
この人たまさんの子供だったんだ。
私は封筒を握り締め、車に乗り込んだ。