アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女

「ママ…ごめんね。私、大切な人が出来て、その人が目を覚ましてくれないの」







「…………」







「それで、始めてママの気持ちが少しわかった。私の大切な人も、世の中に認められるような生き方をしている人じゃない。でも、私にとっては大切な人なの。その人が隣にいてくれない。それが辛いんだ」






「…………」





ママに話をしながら、伸也さんの微笑を思い出して涙が出そうだ。






「境もママにとって大切な人だった。私がその人を奪ったんだね。ごめんね。でも、私にとってはママも大切な人なの。だから、見ない振りはできなかった」






「…………」






下を向きながら話しているから、ママが睨み続けているのかもわからない。

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