アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女

「すいません。よけて下さいね」




看護師さんと先生が小走りで病室に入ってきて、私は伸也さんの元から引き剥がされた。





「谷沢さん。わかりますか?」





先生が伸也さんに話しかける。





離れたところから見てもわかる、伸也さんの口の動き。






「亜美」そう何度も動いていた。






バタバタと人が出入りして30分くらいがたった頃、先生に「意識が回復されたみたいですね」と肩を叩かれた。





カクンと膝の力が抜ける。





両手を床について、歯を食いしばった。





伸也さんに言わなきゃいけないことがある。





笑顔で言いたかったんだ。




まだ泣いちゃダメ。




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