アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女
アイシテル 3
悪夢
伸也さんの手から逃げるようにして走り去った後、私はカズと手を繋いでマンションへ戻った。
カズも何かを抱えている。
いつも明るくて、前向きなカズだけど、心には大きな傷かある。
カズがいつもお菓子を手放さないのは、きっとそのせい。
過食性とまではいかないけれど、カズは食べることでバランスをとっている。
お菓子はいつも食べているけれど、ご飯を食べているところは見たことがない。
「今日ね、カズの部屋に泊まって」
「カズの部屋?」
「たまり場以外に、カズの部屋があるんだよ」
「マンションに?」
「そう。カズは女の子一人だからって、伸也さんがカズにだけ部屋をくれたの」
「へぇ」
「いいでしょ?」
「いいよ」
「じゃあ、今日は溜まり場に行かないで、カズの部屋に行こう」