ONE MUSIC
第一章



キャーキャーと騒ぎ、盛り上がりまくっているこの場で、私はひどく、後悔した。





オトモダチが物凄く少ない私。

そんな私には、完璧孤立しているにも関わらず、毎日声が掛る。



私は別に1人で良いんですよ。

ギターとチューナーと五線譜さえあれば、それでいいんですよ。あ、あと干し梅と。



……と、声を掛けられる度にいつも思う。

が、何を血迷ったか今日の私は違った。





今日は、3学期の期末考査5日目、即ちテスト最終日だった。

死ぬほど歌いたいのをむっちゃ我慢してテスト勉強に励まなければいけない、最後の日。


その溢れ返る解放感を味わっていた放課後のことだ。

“カラオケ行かない?”と、誘われたのは。



いつもなら即断る。

相手が可哀想なくらいの速さで、即答。


しかし、5日間も愛しのギターに触れられなかった苦しみと、今日からはまた歌えることに対する喜びで、今日の私は凡そ44%狂っていた。



ほんっっっっとうに、最大の過ちを犯して、私はYESと返事をしてしまった。


そして、今思う。




―――…カラオケって、何だろう。





「南さん、歌わないのぉ?歌ってよぉ!」


―――…歌って、何だろう。



「あ、あれ歌って!AKBのやつ」


―――…あれって、何だろう。



「じゃあさ!俺とデュエットしようぜ?」


―――…デュエットって、何だろう。




とまではいかないけれども。



< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop