ONE MUSIC
それから1人1人、ゆっくり眺め、
そして、全員回った後、斜め上を向く。
『神様』
フッと笑い、一言。
それだけ呟いて、個室を後にした。
今考えれば、私は変な人だった。
「歌は遊びじゃないよ。神様。」
カラオケに誘ってあげた人が突如そう呟いて出て行ったら、誰もが“頭大丈夫か”と思うことだろう。
でもこの時、私は、何も思わなかった。
ただ、“歌”を利用して、合コン的なことをしないでほしかった。
“歌”という名を使うんだったら、真剣に歌ってほしかった。
その想いが私の中で転換した結果、「神様」に行きついた訳だ。
……違うな。
私の中で歌は神様だから、そのまま言葉にしてしまっただけかもしれない。
まあどうであれ、私はこの時知らなかった。
意味不明なセリフを発して個室を出て行った私に、興味を持った人がいたなんて。