【原作】妖精なアイツ
私はまだ鼻を抑えたまま、
ドアの近くの椅子に腰かけた。



「光太、俺に用って何だ?」



染五郎さんは生徒会の仕事をしていた様だが、
手を止め妖精の方を向いた。



幸い、
他の生徒会役員はいない。



染五郎さんと妖精、私の三人だけ。



「ぶ、ブラザー。
今年の文化祭さ…」


「うん?」


「イベント…出ないの?」



妖精がそう言った瞬間、染五郎さんの目は泳いでいたが、
その後、苦笑いしてこう言った。



「ああ…
仕事が忙しいからね」


「嘘だね。」



妖精はピシャリと言葉を遮った。



「ブラザーは嘘をつくと目を見ない。
長年兄弟やってるんだから分かるよ。」



妖精がそう言うと染五郎さんは頭をかかえた。



「桜井先生…
ゴリーチャーと組むんだよ。
それでもいいのかい?」





「規子がいいなら……いいんじゃないか?」



微笑んだ染五郎さんは、
また、目を見ていなかった。




無理をしているんだと、
私でも分かった。
< 103 / 121 >

この作品をシェア

pagetop