【原作】妖精なアイツ
沈黙のなか、
調理場のドアが開いた。

――――ガラッ


音を立て、
ドアが開いた。



「ソーメン!」


声をあげたのは、
美希の兄貴だった。


「何?
もう練習終わったん?」


「いや、
今休憩中。

光太に用事があって」



染五郎さんがそう言うと私は妖精の方を見た。
妖精はただキョトンとして立っているだけだった。



「ゴリが呼んでるよ。
海岸で待ってるって」



ゴリ……?
一体アイツは何を考えてるんだ…。



「そうやな!
カレーもルー入れるだけやし、後やっとくから美希と王子で行ってこい!」



兄貴がワカメ頭を揺らしながら言う。



「じゃ、じゃあ行ってくる…」



私と妖精は小走りで海岸へと向かった。





「…大丈夫かな」



「え?」



染五郎の言葉に、
美希の兄貴は耳を近づけた。



「ゴリ…
何か企んでるみたいだったから、
光太に何かするつもりなんじゃないかって思ってさ。

行かせない方が良かったかな?」



「なんや、
心配症な兄貴やなあ!

大丈夫やって!
男の子なんやから!!」


美希の兄貴はガハハと笑った。
< 65 / 121 >

この作品をシェア

pagetop