【原作】妖精なアイツ
「――――美希?」



のり姉の声で私は正気に戻った。
あの、妖精の…声では無い言葉に放心状態になっていた。



「な、何?」


「いや、ボーっとしてたから…大丈夫?」



私は静かに頷いた。
私は大丈夫。



でも………



妖精は―――――?




私は妖精の方を見た。


妖精は少しも動かず、
その場にうつ伏せになっていただけだった。


“思っても無いくせに”



妖精は、
まだ…のり姉の事を……?



私の胸の奥で、
何かがザワザワと騒ぎ出していた。

妖精は体を起こし、座ったまま、
染五郎さんの方を見た。



「お前、強くなったなあ。
俺負けそうだった。」



染五郎さんは笑って、
手を差し出した。



いや、
あのままいってたら―――


もしかして妖精が勝っていたかも知れない。



妖精は無言で染五郎さんと握手した後、
黙ってどこかに歩いて行った。



「の、のり姉!
私行ってくる!!」



私はそう言い、
妖精を追いかけた。



「…何で光太応援したん?」



染五郎さんが余裕の顔でのり姉に話しかける。



「その方が美希も応援しやすいんちゃうかなって思って」



のり姉はそう言って微笑んだ。
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