【原作】妖精なアイツ
でも、
どうしても許せなかったのは



女装だった。



ティンカーベル…
ヒラヒラの綺麗な服を見せられた時は目眩がした。



「光太くん絶対似合うのにー!」



女子はそう言っていた。
でも、男が着るもんじゃないだろう。



―――今なら平気だけど。



とりあえず、
衣装を着るのは本番だけ。



『本番はちゃんとやるから』



そうやって逃げていた。



でも本当に、
本番はちゃんとするんだ。



桜井先生に、
見てもらう為に―――…

「岩松ー!
ウェンディにヤキモチやく所、もっとリアルにできねえのか?」


ゴリは台本を丸めて俺を叩く。


「ヤキモチ…?」


焼き餅?
餅を焼くシーンなんかあったかな?

と、ベタな事を思って首を傾げた。



「お前、好きな子と他の男が話してたりイチャついてたらヤキモチやくだろお?

思い出してやってみろ!!」



―――僕はまだ、
“ヤキモチ”をやいた事がなかった。


それ以前に、
好きな子なんていないし―――…





その日は
表現の仕方がよく分からなかった。
< 77 / 121 >

この作品をシェア

pagetop